「節税対策」という言葉は、所得の高い人ほど魅力的に感じるかもしれません。しかし、絶対に忘れないでいただきたいのは、所得税が節税できるということはすなわち、不動産投資の収支が赤字であるということです。
この前提を理解せずに、年収がたとえばたかだか1,000万円程度の方が節税目当てで手を出すと、「節税できる以上の実損を出して持ち出しが発生する」という典型的な失敗事例を飾ることになります。
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キャッシュフローまで赤字化するリスク
そもそも、不動産投資での節税は、減価償却費分での節税が本筋です。それを忘れて節税ばかりが頭にあると、家賃収入部分での赤字に抵抗がなくなってしまいます。そしてこのキャッシュフローが赤字化すると、金融機関からの評価が著しく低くなるので、将来的に望むべき融資を受けられなくなるリスクすら生じます。不動産投資を拡大しようとしても、できなくなってしまうのです。
節税に目がくらんだメンタリティ
たとえば、新築区分マンションは通常は鉄筋コンクリート(RC構造)なので法定耐用年数が47年と非常に長く、1年ごとの減価償却費用が取りづらいです。登録免許税や印紙税など、初年度に大きく計上できた諸経費は、2年目以降からは計上できません。そして、銀行への支払い利息も通常は元利均等返済でしょうから、計上できる金額は年々減少する一方です。
さてどうしましょうか。
そういえば、物件の築年数が若返ることはないので、共用部の管理費や修繕積立金は値上がりの可能性もありますし、家賃は当然に新築時の家賃を維持することはありません。空室が出れば家賃収入もさらに減りますし、このあたりで赤字になったら節税効果が高まる、そうしよう。
こんな考えをしているとまともな投資能力など身につきませんし、そもそもこのようなメンタリティでは投資に対して相当に目が曇ることになります。そして、悪徳投資会社のカモになることは間違いありません。
お金をドブに捨てていることになっていないか
節税目的でマンション購入をご検討中の方に考えていただきたいのですが、減価償却ではなく家賃収入部分でも赤字を垂れ流して「やった、節税だ」というのは、人間の知的営みとしては非生産的ではないでしょうか。
そもそも、投資というのはまずは収益が上がることが大前提です。収益が上がってそのうえでさて税金をどのように節約しようか、そう考えなければなりません。
もっとも、課税所得が少なくとも3,000万円から4,000万円以上は安定的に発生してしまう構造の方が、何とかしてお金をドブに捨てて税金を減らしたいならばそれはそれで良いでしょう。
しかし、通常の会社員や公務員の方々で、年収もせいぜい1,000万程度の方々が、何となく節税という言葉を中心に考えて飛びつくと、これからの人生で余計な面倒ごとをしょい込むだけとなります。
物件選びはまずは収支が上がることを前提に考えてください。
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